「俺の力……。慧にーさんが再び、操られないようにするためにはどうしたらいいんだ」
奏多には躊躇いがある。不安もある。
真実は何よりも残酷な凶刃と化しているのだから。
自分が『破滅の創世』と呼ばれる最強の神の具現である。
その事実は鋭利で、それを知った奏多の心を今も激しく揺さぶっている。
これからどうすればいいのか、その答えを見出だせずにいた。
だからこそ――
「奏多、俺はおまえの力を信じているぜ」
慧の物言いは奏多を導くようにどこまでも静かだった。
まだ、奏多の心は、神の意思に囚われていることを知っている。
自分もまた、呪いともいえる宿命に翻弄されていた時期があったのだから。
「もう二度とおまえを犠牲にするつもりはないからな。たとえ、再び操られても、絶対に守ってみせるさ」
慧は守りきれるはずだと信じている。
神の意思ではなく、最後まで自分の意思を貫きたいと願っている奏多の想いを。
それが『冠位魔撃者』――その名が献ぜられた慧にとって、前に進むための力となるはずだから。
「大丈夫ですよ、奏多くん」
「な、なにがだよ……」
導くような結愛の優しい声音。奏多は事態を飲み込めないように頭を振る。
「私は奏多くんが……『破滅の創世』様が大好きですから!」
奏多に向ける結愛のまっすぐな瞳は変わらない。いつだって紛(まご)うなき本音を晒しているのが窺えた。
何故だろう。
こうして結愛を見ていると、まるで小さな箱の蓋を開いたように思い出が溢れ出してきた。
嬉しかったことも、悲しかったことも。
ひとりぼっちだと泣いた夜も、誰とも分かり合えないと落ち込んだ夜も、誰かに抱きしめてほしいと甘えた夜だってあった。
何時だって周りの人達に守られていたと知ったのは広い世界を見た時だっただろう。
その頃は明日を恐れることも、過去を嘆くこともなく、幸せな今だけがあった。
「ふふっ、前に約束しましたね」
結愛は一度だけ目を伏せ、そしてまた奏多をまっすぐに見つめた。
「私にとって、奏多くんは奏多くんです。だから、他の神様や『破滅の創世』様の配下さん達には奏多くんを渡しませんよ」
数多の思惑が絡み合っている今も、こうして間違いなく奏多は『結愛の幼なじみ』としてこの世界に存在している。その事実は途方もなく、結愛の心を温める。
「そして、ヒューゴさんや一族の上層部さん達にも奏多くんを渡しませんよ。奏多くんとずっとずっと一緒にいたいですから!」
結愛は瞳に意志を宿す。一族の上層部の好き勝手にはさせないと――強い意志を。決して譲れない想いがあった。
奏多には躊躇いがある。不安もある。
真実は何よりも残酷な凶刃と化しているのだから。
自分が『破滅の創世』と呼ばれる最強の神の具現である。
その事実は鋭利で、それを知った奏多の心を今も激しく揺さぶっている。
これからどうすればいいのか、その答えを見出だせずにいた。
だからこそ――
「奏多、俺はおまえの力を信じているぜ」
慧の物言いは奏多を導くようにどこまでも静かだった。
まだ、奏多の心は、神の意思に囚われていることを知っている。
自分もまた、呪いともいえる宿命に翻弄されていた時期があったのだから。
「もう二度とおまえを犠牲にするつもりはないからな。たとえ、再び操られても、絶対に守ってみせるさ」
慧は守りきれるはずだと信じている。
神の意思ではなく、最後まで自分の意思を貫きたいと願っている奏多の想いを。
それが『冠位魔撃者』――その名が献ぜられた慧にとって、前に進むための力となるはずだから。
「大丈夫ですよ、奏多くん」
「な、なにがだよ……」
導くような結愛の優しい声音。奏多は事態を飲み込めないように頭を振る。
「私は奏多くんが……『破滅の創世』様が大好きですから!」
奏多に向ける結愛のまっすぐな瞳は変わらない。いつだって紛(まご)うなき本音を晒しているのが窺えた。
何故だろう。
こうして結愛を見ていると、まるで小さな箱の蓋を開いたように思い出が溢れ出してきた。
嬉しかったことも、悲しかったことも。
ひとりぼっちだと泣いた夜も、誰とも分かり合えないと落ち込んだ夜も、誰かに抱きしめてほしいと甘えた夜だってあった。
何時だって周りの人達に守られていたと知ったのは広い世界を見た時だっただろう。
その頃は明日を恐れることも、過去を嘆くこともなく、幸せな今だけがあった。
「ふふっ、前に約束しましたね」
結愛は一度だけ目を伏せ、そしてまた奏多をまっすぐに見つめた。
「私にとって、奏多くんは奏多くんです。だから、他の神様や『破滅の創世』様の配下さん達には奏多くんを渡しませんよ」
数多の思惑が絡み合っている今も、こうして間違いなく奏多は『結愛の幼なじみ』としてこの世界に存在している。その事実は途方もなく、結愛の心を温める。
「そして、ヒューゴさんや一族の上層部さん達にも奏多くんを渡しませんよ。奏多くんとずっとずっと一緒にいたいですから!」
結愛は瞳に意志を宿す。一族の上層部の好き勝手にはさせないと――強い意志を。決して譲れない想いがあった。



