「一族の上層部は、幹部の情報をある程度、得ている。その中には先程、相対した蒼天の王アルリットと忘却の王ヒュムノス、そして不滅の王レンの情報も含まれている」
「彼女達の情報も……?」

司の報告は、奏多の瞳を揺らがせるのに十分すぎた。

「とはいえ、全てを知り得ているわけじゃない。蒼天の王アルリットの強奪の能力といい、幹部はどれほどの力を持っているのかはいまだ計り知れていない」
「まぁ、『破滅の創世』の配下の奴らは、厄介極まりねえからな」

流石にそう簡単には情報を渡してくれないかと、慧は思考を巡らせた。

「『境界線機関』の基地本部は、居住区域が他の基地と比べれば密集し、防衛にも長けていた。なおかつ軍事基地に隣接した『境界線機関』の基地本部は、この世界にとって最後の要だったはずだ。その場所が崩壊しても、一族の上層部の矜持は変わらないんだろうな」

司は冷静にそう分析する。
痛手を受けたのは『境界線機関』だけではない。
一族の上層部も、内密者を利用されたことで痛手を負っただろう。
それでも、一族の上層部の矜持が狂気を呼び続けていることは変わらない。

静寂が満ちた。

一族の上層部にとって、最大の誤算は『破滅の創世』の配下達の存在だった。
彼らさえいなければと思うことは幾度も起こり、そして今もまた起ころうとしている。
『境界線機関』の基地本部。
襲撃されても、戦うことを、挑むことをやめないのは、それが一族の上層部の矜恃に連なるものゆえだろう。

「まぁ、『破滅の創世』様の幹部の力がそう簡単に判明するわけないからな」

ひりつく緊張が慧の首元を駆け抜けて行く。
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。

「たとえ、一族の上層部でも、幹部の情報を全て得るのは無理だろうさ」
「……だけど、私達のことを知っている幹部が、三人もいるなんて厄介ね」

観月はこれから先の戦いに緊張を走らせる。
『破滅の創世』の配下の力は強大だ。
その上、不老不死である。
何かあれば、勝敗の天秤は『破滅の創世』の配下達に傾く。

「とにかく、急ごう。ここで『破滅の創世』の配下達に襲われては元もこうもない」

事は急を要すると、司達『境界線機関』の者達は殺風景な荒地を突き進む。
奏多達は基本的に戦闘機に搭乗することはできないため、近くの空港から飛行機で一族の上層部の本部に向かうことになる。

「飛行機に乗るのは久しぶりだな」

奏多は眸に緊張の色を走らせる。
それを聞いた結愛は、ぱあっと表情を華やかせた。