「確か、名前はレンだったな。恐らく、上位の幹部だろうさ」
「そうね……。かなり手強そうね」

慧の説明に、透明感のある赤に近い長い髪をなびかせた観月は表情を強張らせる。
『破滅の創世』の配下の力は強大だ。
その上、不老不死である。
何かあれば、勝敗の天秤は『破滅の創世』の配下達に傾く。

「……何でだろ」

慧達が新たな戦いに意識を向け始める。
その中で、奏多だけがただ無心に空を見続けていた。

「レン……。どこかで聞いたことがある。ずっと前から知っていたような気がする」

レンのことを思い出していると、まるで意識が吸い込まれそうになる。
今の奏多にとって、まるで揺りかごのようにどこよりも近く、どこよりも遠い場所に『破滅の創世』の配下達の存在があった。

「不滅の王……レン……」
「不滅の王?」

奏多のつぶやきに、結愛はぽつりと素直な声色を零す。

「随分と物騒だな。確かに上位の幹部らしいけどな」

慧の言い草に、観月はふっと微笑む。

「不滅の王、まるで世界を滅ぼす存在みたいね」
「そうだな。まぁ、もっとも『破滅の創世』の配下達そのものが、世界を滅ぼす存在だけどな。……とはいえ、不滅の王、聞いたことがあるな」
「聞いたことがある……?」

観月が促したものの、慧はしばらく考えた様子を見せた。

「つーか、曖昧だけどな」
「慧、教えて。どこで聞いたことがあるの?」

瞳に強い眼差しを宿した観月は慧を見つめる。

「一族の上層部の本部さ」
「なっ……!」

何処か吹っ切れたような顔をして言う慧の顔を観月は凝視した。

「一族の上層部の本部は、不滅の王レンのことを知っているの?」
「幹部の情報をある程度、得ているらしいぜ。まぁ、全員じゃないけどな」

そうつぶやいて空を見上げた慧は、風の行く先から目を逸らした。

「一族の上層部は、幹部の情報を得てどうするつもりなのかしら……」
「もちろん、利用するためだ。『破滅の創世』の配下の奴らは不老不死。それに対抗するためにさ」

慧が苦々しいという顔で語った話に観月は絶句する。
混乱は治まることはなく、むしろ深まっていた。

「つーか、俺より、『境界線機関』の方が詳しく知っているよな?」

意味深な慧の声音に、『境界線機関』のリーダーであり、一族の冠位の者の一人である雄飛司は剣呑に返す。

「当たり前だろう。一族の上層部の本部には何度も足を運んでいる」

司は感情を交えず、ただ事実だけを口にした。