そこに奏多の母親が躊躇うようにいそいそと近づいてくる。
「奏多、あのね……」
「母さん……?」
様子を窺うような奏多の母親の声音。
奏多は不思議そうに目を瞬く。
「これからどんなことがあっても、あなたは私達の息子だから……。どうか……それを忘れないで……」
奏多の母親は愛しそうに奏多を優しく抱きしめた。
「大丈夫です! 奏多くんのお母さん、大丈夫ですよ! きっと……これからも奏多くんは奏多くんのままです!」
結愛が先を促すように言葉を重ねたのは、奏多の母親がどこか不安そうな表情を浮かべていたためである。
「ほらほら、私の予感は当たるんです。だから大丈夫です!」
「……そうね」
思いの丈をぶつける結愛の様子を見て、奏多の母親は表情を和らげた。
「奏多くんはこれからも奏多くんのままですよ」
「約束の力は無限大だからな」
全てを包み込むような温かな光景は、張り詰めていた奏多の心を優しく解きほぐす。
「ふふ、言いましたね、約束の力は無限大ですよ!」
忘れることのない約束は、二人の間に今も確かに。
あとどれ程、奏多と共にいられるのかは分からない。
それでも、もしも叶うのならば――その最後の一時まで。
隣にいることが出来たらと……結愛は願わざるを得ないものであった。
奏多達が今後に向けて話し合っていた頃。
この世界に存在するとある邸宅。その邸宅に『破滅の創世』の配下達は集っていた。
『境界線機関』の基地本部の戦いに参加したアルリット達も、状況報告のために帰還している。
「……今回は想定外の出来事が起きました。『境界線機関』、あれほどの対応をしてくるとは。いささか、見くびっておりました」
柔らかく自然体にそう礼を示したレンは藍色の瞳に少しばかりの後悔を乗せている。
「そして、『境界線機関』の基地本部にあれほど、一族の上層部の内密者がいるとは思いませんでした」
レンは今回の基地本部への潜入で、新たに得た情報を語っていく。
「……今の『破滅の創世』様は記憶を奪われて一族の者に加担させられております。一族の上層部が神の記憶を再封印する手段を持ち得ていたことは私達、幹部の者にとっても大いに痛手でした」
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。
『忘却の王』ヒュムノスと『蒼天の王』アルリット、そしてこの場を仕切っているレンもまた、幹部の一人である。
「記憶の再封印。その影響で、『破滅の創世』様の記憶のカードを用いても、『破滅の創世』様の記憶が完全に戻ることはありませんでした」
『破滅の創世』様の記憶のカードを用いても、記憶が戻らなかったという事実。
『破滅の創世』の配下達の間で動揺が波及した。
「奏多、あのね……」
「母さん……?」
様子を窺うような奏多の母親の声音。
奏多は不思議そうに目を瞬く。
「これからどんなことがあっても、あなたは私達の息子だから……。どうか……それを忘れないで……」
奏多の母親は愛しそうに奏多を優しく抱きしめた。
「大丈夫です! 奏多くんのお母さん、大丈夫ですよ! きっと……これからも奏多くんは奏多くんのままです!」
結愛が先を促すように言葉を重ねたのは、奏多の母親がどこか不安そうな表情を浮かべていたためである。
「ほらほら、私の予感は当たるんです。だから大丈夫です!」
「……そうね」
思いの丈をぶつける結愛の様子を見て、奏多の母親は表情を和らげた。
「奏多くんはこれからも奏多くんのままですよ」
「約束の力は無限大だからな」
全てを包み込むような温かな光景は、張り詰めていた奏多の心を優しく解きほぐす。
「ふふ、言いましたね、約束の力は無限大ですよ!」
忘れることのない約束は、二人の間に今も確かに。
あとどれ程、奏多と共にいられるのかは分からない。
それでも、もしも叶うのならば――その最後の一時まで。
隣にいることが出来たらと……結愛は願わざるを得ないものであった。
奏多達が今後に向けて話し合っていた頃。
この世界に存在するとある邸宅。その邸宅に『破滅の創世』の配下達は集っていた。
『境界線機関』の基地本部の戦いに参加したアルリット達も、状況報告のために帰還している。
「……今回は想定外の出来事が起きました。『境界線機関』、あれほどの対応をしてくるとは。いささか、見くびっておりました」
柔らかく自然体にそう礼を示したレンは藍色の瞳に少しばかりの後悔を乗せている。
「そして、『境界線機関』の基地本部にあれほど、一族の上層部の内密者がいるとは思いませんでした」
レンは今回の基地本部への潜入で、新たに得た情報を語っていく。
「……今の『破滅の創世』様は記憶を奪われて一族の者に加担させられております。一族の上層部が神の記憶を再封印する手段を持ち得ていたことは私達、幹部の者にとっても大いに痛手でした」
『破滅の創世』の配下の者達の中でもひときわ常軌を逸している存在が『幹部』と呼ばれる者だ。
『忘却の王』ヒュムノスと『蒼天の王』アルリット、そしてこの場を仕切っているレンもまた、幹部の一人である。
「記憶の再封印。その影響で、『破滅の創世』様の記憶のカードを用いても、『破滅の創世』様の記憶が完全に戻ることはありませんでした」
『破滅の創世』様の記憶のカードを用いても、記憶が戻らなかったという事実。
『破滅の創世』の配下達の間で動揺が波及した。