「奏多様のご両親は今、どこに?」
「はい。現在は別の基地におられます。これからこちらに戻られる予定です」
司が援軍に来た者達で安否情報を確認したことで、奏多と結愛の両親はすぐにこちらに出向いてくれることになった。
ただ、今回の『破滅の創世』の配下達の襲撃を受けて、多くの人達が別の基地に滞在している。
「奏多くん、早く早く。お父さんとお母さん、もうすぐ来るかもです」
「急ぐと危ないだろ。それにこれから出発なんだから、すぐはないと思うな」
今は養生の時だ。それを終えた時、彼らの戦いはまた始まるのだろう。
激戦を乗り越えてきたせいか、奏多と結愛にとって、両親との再会は久しぶりの安らぎのひとときだった。
やがて、奏多達の両親が乗ったバスが『境界線機関』の基地本部へとたどり着く。
「父さん、母さん!」
奏多は両親との再会を果たしていた。
「奏多!」
「無事で良かった……」
開口一番、そう言うと、奏多の両親は調度を蹴散らすように奏多の傍に走り寄るとその体を思いきり抱きしめる。
あまりにも突然の出来事だったため、奏多はすぐには反応することができず、されるがままに抱き寄せられていた。
「お父さん、お母さん」
「ただいまです!」
観月と結愛もその近くで両親との再会を喜んでいる。
ただ、慧だけは懐かしむように奏多達の様子を見つめていた。
「家族か……」
不安なのか、期待なのか、懺悔なのか、願いなのか、分からない。
両親と穏やかに談笑する奏多達。彼らを見つめている慧の胸は複雑な感情で壊れそうなくらいに高鳴っている。
「もし、奏多を連れてきたら、父さんと母さんはどんな反応を示すんだろうな。やっぱり、蒼真って呼ぶかもしれねえな」
そんな想像を慧が抱いたのは当たり前のことだった。
「そうかもしれないな」
慧の独り言に、そう応えたのは司だった。
「俺は物心ついた頃には、両親がいなかったら、おまえ達が少し羨ましいと思う」
「……司」
慧に向ける司のまっすぐな瞳は変わらない。紛(まご)うなき本音を晒しているのが窺える。
だからこそ、その言葉は観月の心を揺さぶった。
「羨ましい……」
思い出すのは導くような司の真剣な声音。
此ノ里家の呪いに囚われている自分。
そして、まどかと向き合うことを怖がっていた観月に、司は思いの丈をぶつけてくれたのだ。
『本当は助けてほしいんだろう。助けてほしいならちゃんと伝えろ!』
この期に及んで本音を隠そうとする観月を叱り飛ばす司の姿。
『たとえ、おまえと慧が一族の上層部に利用されてもな。俺は仲間を見捨てる気はないぜ』
それは司が示した確かな信念だった。
悪意に晒されながらも、それでも乗り越えて進むしかない……と言うように。
「はい。現在は別の基地におられます。これからこちらに戻られる予定です」
司が援軍に来た者達で安否情報を確認したことで、奏多と結愛の両親はすぐにこちらに出向いてくれることになった。
ただ、今回の『破滅の創世』の配下達の襲撃を受けて、多くの人達が別の基地に滞在している。
「奏多くん、早く早く。お父さんとお母さん、もうすぐ来るかもです」
「急ぐと危ないだろ。それにこれから出発なんだから、すぐはないと思うな」
今は養生の時だ。それを終えた時、彼らの戦いはまた始まるのだろう。
激戦を乗り越えてきたせいか、奏多と結愛にとって、両親との再会は久しぶりの安らぎのひとときだった。
やがて、奏多達の両親が乗ったバスが『境界線機関』の基地本部へとたどり着く。
「父さん、母さん!」
奏多は両親との再会を果たしていた。
「奏多!」
「無事で良かった……」
開口一番、そう言うと、奏多の両親は調度を蹴散らすように奏多の傍に走り寄るとその体を思いきり抱きしめる。
あまりにも突然の出来事だったため、奏多はすぐには反応することができず、されるがままに抱き寄せられていた。
「お父さん、お母さん」
「ただいまです!」
観月と結愛もその近くで両親との再会を喜んでいる。
ただ、慧だけは懐かしむように奏多達の様子を見つめていた。
「家族か……」
不安なのか、期待なのか、懺悔なのか、願いなのか、分からない。
両親と穏やかに談笑する奏多達。彼らを見つめている慧の胸は複雑な感情で壊れそうなくらいに高鳴っている。
「もし、奏多を連れてきたら、父さんと母さんはどんな反応を示すんだろうな。やっぱり、蒼真って呼ぶかもしれねえな」
そんな想像を慧が抱いたのは当たり前のことだった。
「そうかもしれないな」
慧の独り言に、そう応えたのは司だった。
「俺は物心ついた頃には、両親がいなかったら、おまえ達が少し羨ましいと思う」
「……司」
慧に向ける司のまっすぐな瞳は変わらない。紛(まご)うなき本音を晒しているのが窺える。
だからこそ、その言葉は観月の心を揺さぶった。
「羨ましい……」
思い出すのは導くような司の真剣な声音。
此ノ里家の呪いに囚われている自分。
そして、まどかと向き合うことを怖がっていた観月に、司は思いの丈をぶつけてくれたのだ。
『本当は助けてほしいんだろう。助けてほしいならちゃんと伝えろ!』
この期に及んで本音を隠そうとする観月を叱り飛ばす司の姿。
『たとえ、おまえと慧が一族の上層部に利用されてもな。俺は仲間を見捨てる気はないぜ』
それは司が示した確かな信念だった。
悪意に晒されながらも、それでも乗り越えて進むしかない……と言うように。