「『破滅の創世』様、待っていてね。あたし達、『破滅の創世』様のために必ず拠点にお連れするよ」

アルリットの胸から湧き上がってくるのは確かな想いだった。

「リディア。あたしとレンが『破滅の創世』様を拠点にお連れするよ。それが一族の魔の手から、『破滅の創世』様をお救いすることに繋がるんだし」
「了解」

それは当たり前だ。リディアにとっての正義とは即ち『破滅の創世』の言葉の完遂である。
アルリットが神の言葉を代弁しているならば、つまり彼女の意志は天の囁きであるのだから。

「レン。わたしは我が主の無念を晴らしたい。拠点にお連れすることは、わたし達の目的を遂行する足掛かりになるはずだ」
「それは私も同じ気持ちです。一刻も早く、一族の者の手から『破滅の創世』様をお救いしなくては……!」

リディアの宣誓に呼応するように、レンは一族打倒を掲げる。
『破滅の創世』の配下達の気持ちは皆同じだ。

「それにしても分かりませんね。彼らは何故、ここまで私達に抵抗をするのか……。その行為がこの世界のみならず、数多の世界を危機に晒すことに繋がるというのに……」

戦局を把握していたレンは独り言ちた。

『破滅の創世』の神命が起点となって、この世界の運命は決まっている。
『破滅の創世』の配下達にとって、『世界の命運』は流れる水そのもの。
絶対者である『破滅の創世』のなすがままでなくてはならない。
だからこそ――
奏多を狙いに定めたアルリットは残像を残すほどの超加速で戦場を飛び回る。

「『破滅の創世』様を必ず、拠点にお連れするよ!」
「悪いな、アルリット! そうはさせねえぜ!」

慧は二丁拳銃を乱射し、銃弾をこれでもかと撃ち込んでいく。
荒れ狂う嵐の如き乱射は確実にアルリットの動きを妨げる。
それでも慧とアルリットの実力差は歴然だった。

「ちっ……」

慧が瞬く間に、アルリットとの距離が一瞬で縮まった。

「ケイ、これで終わりだよ!」

アルリットは慧を完全に消滅させるために膨大な力を解き放つ。
しかし――

「慧にーさん!」

そこに奏多の――『破滅の創世』の神の力を加味すれば、劣勢は優勢に変わる。
奏多は直撃する寸前、慧の前に立つとその強撃を片手でいとも容易く弾いたのだ。

「奏多、助かったぜ」

安堵の表情を浮かべた慧は感謝の念を奏多に伝える。
だが――。

「『破滅の創世』様……」

そう告げるアルリットは明確なる殺意を慧達に向けていた。

「『破滅の創世』様を惑わすこの世界。この世界にもたらされるべきは粛清だよ」

アルリットの胸から湧き上がってくるのは鋭く尖った憤り。
それに応えるように――。