「悪いが、おまえ達の好きにさせるつもりはないさ。ここで食い止めさせてもらうぜ!」

そこに慧の銃口から煌めく陽光を斬り裂くように、乾いた音を立てて迫撃砲が放たれる。
七発ほどの弾頭が放物線を描き、すぐに爆音が轟いた。
だが、弾はアルリット達に命中する前に全て塵のように消えていった。
しかし、その行為によって、アルリットの猛撃は不発に終わる。

「愚かですね。このような攻撃で私達を倒せると思っているとは」
「もちろん、倒すことが目的でないさ。ここで食い止めることだ!」

レンが事実を述べても、慧は真っ向から向き合う。

「司、ここは任せな!」
「慧」

慧は『境界線機関』の者達が体勢を整える猶予を作るようにレン達に向けて発砲した。
弾は寸分違わず、レン達に命中するが、すぐに塵のように消えていく。

「……まさか、おまえに助けられるとはな」
「俺達の危機を救ってくれたのは……司。おまえ達だぜ」

安堵の吐息を零す司を前に、慧は含みのある視線を向けた。

「死ぬなよ」

慧の心からの願い。
その眼差しはまっすぐで、強い意志の光に満ちていた。

「当たり前だ。ここで死ぬつもりはない。おまえ達こそ無理はするな」

それは司とて同じ。慧達に対して同じ想いを抱いている。

「……まぁ、今の俺達のやるべきことは一つ。ここを凌ぐことだけさ」
「そうだな……」

慧と司は瞳に意志を宿す。『破滅の創世』の配下達の、そして一族の上層部の好き勝手にはさせないと――強い意志を。決して譲れない想いがあった。





「なるほど、発信器ですか。これで連絡を取っていたのですね」

レンは地面に落ちている発信器に気づく。
思わぬ状況に追い込まれたレンだったが、次に取った行動は早かった。

「この場にいる『破滅の創世』様の記憶を再封印した者達を全て根絶やしにしたかったのですが、仕方ありません。せめて、『破滅の創世』様だけでも拠点にお連れします」

レンの胸から湧き上がってくるのは鋭く尖った憤り。
そして――。

「『破滅の創世』様、待っていてね。あたし達、『破滅の創世』様のために必ず拠点にお連れするよ」

アルリットの胸から湧き上がってくるのは確かな想いだった。

「リディア。一族の上層部の妨害によって、『破滅の創世』様の記憶を取り戻すことはできなかった……。けど、このまま『破滅の創世』様をあたし達の拠点にお連れしようよ。それが一族の魔の手から、『破滅の創世』様をお救いすることに繋がるんだし」
「了解」

それは当たり前だ。リディアにとっての正義とは即ち『破滅の創世』の言葉の完遂である。
アルリットが神の言葉を代弁しているならば、つまり彼女の意志は天の囁きであるのだから。