「……ああ」
そう口にしたものの、現実離れした非日常はもはや奏多達の日常と密接に絡んでいる。
幾度も生じる攻撃。戦闘の流れは長期戦に至っていた。
「でも、俺はこれからどうしたらいいんだろ……」
消え入るようなその独白には、微かに自嘲の陰りがあった。
周りの景色が妙に寒々しいものに思える。まるで張り詰めた緊張感に身震いするようだ。
この状況は誰かの悪意に彩られて作られているような、そんな気持ちがしていた。
神の魂の具現として生を受けたこと。
尋常ならざる力を持つことは同時に尋常ならぬ運命を背負うことになるのだと、奏多は身を持って知ってしまったから。
「大丈夫ですよ、奏多くん」
「な、なにがだよ……」
導くような結愛の優しい声音。奏多は事態を飲み込めないように頭を振る。
「私達は絶対に負けませんよ! だって、私は奏多くんが……『破滅の創世』様が大好きですから!」
奏多に向ける結愛のまっすぐな瞳は変わらない。いつだって紛(まご)うなき本音を晒しているのが窺えた。
何故だろう。
こうして結愛を見ていると、まるで小さな箱の蓋を開いたように思い出が溢れ出してきた。
嬉しかったことも、悲しかったことも。
ひとりぼっちだと泣いた夜も、誰とも分かり合えないと落ち込んだ夜も、誰かに抱きしめてほしいと甘えた夜だってあった。
何時だって周りの人達に守られていたと知ったのは広い世界を見た時だっただろう。
その頃は明日を恐れることも、過去を嘆くこともなく、幸せな今だけがあった。
「私はどんな奏多くんも大好きですよ。だから、他の神様や『破滅の創世』様の配下さん達には奏多くんを渡しません」
数多の思惑が絡み合っている今も、こうして間違いなく奏多は『結愛の幼なじみ』としてこの世界に存在している。
その事実は途方もなく、結愛の心を温める。
「そして、一族の上層部さん達にも奏多くんを渡しませんよ。奏多くんとずっとずっと一緒にいたいですから!」
結愛は瞳に意志を宿す。
『破滅の創世』の配下達、そして一族の上層部の好き勝手にはさせないと――強い意志を。決して譲れない想いがあった。
「あなたがこの世界にいなきゃ、嫌です。だから、信じてください。奏多くんの心で今まで見てきたものを。感じたことを」
「俺の心で……」
その言葉に奏多の目の奥が熱くなる。体中の皮膚が鳥肌を立てて、感情の全てが震え出す。
――そうだ、きっと。
あの時、感じた温かい何かは……人の心。
そこに疑いを挟む余地はない。
この胸に宿る温もりが全てを物語っていた。
そう口にしたものの、現実離れした非日常はもはや奏多達の日常と密接に絡んでいる。
幾度も生じる攻撃。戦闘の流れは長期戦に至っていた。
「でも、俺はこれからどうしたらいいんだろ……」
消え入るようなその独白には、微かに自嘲の陰りがあった。
周りの景色が妙に寒々しいものに思える。まるで張り詰めた緊張感に身震いするようだ。
この状況は誰かの悪意に彩られて作られているような、そんな気持ちがしていた。
神の魂の具現として生を受けたこと。
尋常ならざる力を持つことは同時に尋常ならぬ運命を背負うことになるのだと、奏多は身を持って知ってしまったから。
「大丈夫ですよ、奏多くん」
「な、なにがだよ……」
導くような結愛の優しい声音。奏多は事態を飲み込めないように頭を振る。
「私達は絶対に負けませんよ! だって、私は奏多くんが……『破滅の創世』様が大好きですから!」
奏多に向ける結愛のまっすぐな瞳は変わらない。いつだって紛(まご)うなき本音を晒しているのが窺えた。
何故だろう。
こうして結愛を見ていると、まるで小さな箱の蓋を開いたように思い出が溢れ出してきた。
嬉しかったことも、悲しかったことも。
ひとりぼっちだと泣いた夜も、誰とも分かり合えないと落ち込んだ夜も、誰かに抱きしめてほしいと甘えた夜だってあった。
何時だって周りの人達に守られていたと知ったのは広い世界を見た時だっただろう。
その頃は明日を恐れることも、過去を嘆くこともなく、幸せな今だけがあった。
「私はどんな奏多くんも大好きですよ。だから、他の神様や『破滅の創世』様の配下さん達には奏多くんを渡しません」
数多の思惑が絡み合っている今も、こうして間違いなく奏多は『結愛の幼なじみ』としてこの世界に存在している。
その事実は途方もなく、結愛の心を温める。
「そして、一族の上層部さん達にも奏多くんを渡しませんよ。奏多くんとずっとずっと一緒にいたいですから!」
結愛は瞳に意志を宿す。
『破滅の創世』の配下達、そして一族の上層部の好き勝手にはさせないと――強い意志を。決して譲れない想いがあった。
「あなたがこの世界にいなきゃ、嫌です。だから、信じてください。奏多くんの心で今まで見てきたものを。感じたことを」
「俺の心で……」
その言葉に奏多の目の奥が熱くなる。体中の皮膚が鳥肌を立てて、感情の全てが震え出す。
――そうだ、きっと。
あの時、感じた温かい何かは……人の心。
そこに疑いを挟む余地はない。
この胸に宿る温もりが全てを物語っていた。