手を繋いだ夢を見た。
いつも一緒にいる弟と、二人きりで晴れた日の公園を歩く夢。
周りには誰もいない。兄弟は無人の公園を燥いで駆け巡り、そのたびにどうでもいいことで一喜一憂する。

「――ありがとうな」

ふと、兄が笑顔のまま、そう呟いた。

「一緒に居てくれてさ」

弟と紡ぐ時間の糸は、時には絡まり、時には外れて思い通りにはならない。
だが、それでも恋い焦がれる気持ちと同じように、今も彼に結びついていた。
理不尽にさらされてきた。
滑稽な現実に直面した。
それでも。その全てを経て今、兄弟はこうして笑えている。
それが他の人にとって、どれほど哀れに映っても。

兄弟はこの瞬間、確かに幸せだった。
確かに幸せだったのだ。

交わないはずの二人の関係が再び繋がった日。
あの日、間違いなく兄弟の世界は変わってしまった。
だけど、それは一族の者達が望んでしまったことだ。

「今が幸せならそれでいい……」

醜い過去から兄は目を逸らす。
二人だけの優しさに満ちた世界。
たとえそれが……仮初めの平穏だと知っていても――。
この地から見える空はいつも美しく輝いて見えた。
他の場所を知らない兄弟にとって、その空が全てだったから――。