嘉正くんの指示通り、私と来光くんで東棟の探索を始めた。



「東棟は……裏庭と特別教室がメインだね」



事前に共有されていた学校の校内図をスマホで表示しながらそう言う。



「裏庭か。ならまず庭から行こっか。井戸の様子も見よう」

「夏期補習で習ったこと、早速実践できるね」



だね、と肩を竦めた来光くん。

私たちは裏庭を目指して歩みを進めた。



下足場とは反対側の非常口から外に出た。分厚い灰色の雲間から月明かりが差している。



「いい月夜だね。スマホのライト、必要ないかも」



丸い月を見上げて白い光に目を細める。



「巫寿ちゃん、ごめんね」



唐突の謝罪に目を丸くした。

隣を歩く来光くんに視線を向けると、彼はどこか気まずそうにつま先をじっと見つめていた。



「皆気を遣ってくれてるの、気付いてる」



苦笑いで頬をかいた来光くんが視線を泳がせながらそう言った。