校長先生は暗い表情のまま私達を一瞥すると、禰宜に鍵の束を渡して「よろしくお願いします」と頭を下げた。

じゃあ私は職員室にいますので、とあっさり校舎に戻って行って、私たちはお互いに顔を見合せた。


「あの人、俺らのこと何にも聞いてこなかったな」

「確かに。普通気になって聞いてくるだろうに」



私たちのことを一瞥していたが大して気に留める様子もなく戻って行った。

こんな時間に高校生が6人、しかも神社から派遣された高校生だ。

気にならないはずがないのに。



「さぁ行きますよ」



禰宜が歩き出して慌てて私たちも歩き出す。



「校長先生が何も言わなかったのは、君たちを同行させることと他言無用を約束する代わりに依頼料の半額で引き受けているからです」

「えっ、そうなの!?」

「ええ。神修の学生さんが来る時はウチはいつもそうしています」



意外な事実に目を丸くした。



「特別な仕事とはいえ客商売ですからね。まだプロではないあなた方が担当するんですから当然の措置ですよ。この機にしっかり学んでください」


依頼料っていくらくらいするんだろう。

夏休みに薫先生が病院で神事をした際、追加料金がかかると言われて事務の人が青ざめていた。

きっと安くはない値段なのだろう。


それに以前禰宜が地方の神社は経営が厳しいという話をしていたし、そう簡単に依頼料を半額に出来るものではないはず。

そこまでしてでも、私たちに経験を積ませようとしてくれているということだ。