「嘉正くんはどう思う?」
「ん?」
「今回の件、怪異なのかな」
腕を組んだ嘉正くんはうーんと首を傾げる。
「怪異であって欲しい、かな」
怪異であって欲しい?
妙な言い方に引っかかる。
「だってさ、もし犯人が怪異じゃなければ人ってことでしょ。同じ人間が次々と人を襲ってるって思ったら、すごく怖いよね」
怪異ではなく人が犯人、その言葉にゾッとした。
言われるまで気が付かなかったけれど確か嘉正くんの言う通りだ。もし犯人が人だった場合、私達と同じ年齢の人が犯人になる可能性もあるということ。
同じ歳くらいの子がこんな酷い事件を起こしているのだと思うと鳥肌が立った。
「結局いちばん怖いのは人間だって、昔からよく言うしね」
「そう、だね」
「何はともあれ、目の前の依頼にしっかり向き合おう」
バスがゆっくりとスピードを落として停留所で止まった。ここで降りますよ、と引率で一緒に来ている禰宜が私たちに声をかける。
急いでプリントをカバンの中にしまい、椅子から立ち上がった。