────事が大きくなって来たのは三ヶ月ほど前のことです。それ以前も細々とした不可解な現象は起きていたようなのですが、ほら、子供ってそういうのを話すのが好きでしょう。だから私もほかの教員も気に止めてなかったんです。でも三ヶ月前、学内でとある事件が起きて……放課後に生徒が屋上から落ちたんです。違いますよ!! 決して自殺なんかじゃありません! あ……す、すみません。でも本当に自殺じゃなくて、落ちたんです。え? ああ……生徒は幸いにも木と芝がクッションになって骨を折る程度で済みました。でも、その生徒がおかしなことを言うんです。"俺は後ろから誰かに押されたんだ"って。誰かに背中を強く押されたんだって。だからその時一緒にいた学生たち一人一人に事情を聞いたら、「あいつは自分から飛び降りたって」。それからです、在校生徒が次々と怪我や事故に会うようになったのは。警察にはとっくに連絡しました。でも一向に何も解決せず、怪我や事故に遭う生徒は日に日に増えています。保護者や教育委員会からの圧も強く、もうどこにどう頼ったらいいのか……。
すっかり太陽は山の向こうに沈み、東の空に月が登る。
私たちはバスに揺られて、調査対象である西院高校へ向かっていた。
何度も読み返したけれど、もう一度配られたプリントに目を通す。昼に社へ以来に来た西院高校の校長先生が話した内容だ。
要約すると、西院高校で不可解な事件事故が多発しているらしい。そしてその全ての共通点が────。
「誰かに背を押された、か……」
隣に座って同じくプリントを読んでいた嘉正くんが顎に手を当てて呟く。