「学校内へ立ち入れるのは全校生徒が帰宅した後でとお願いされておりますので、20時に社の鳥居下に集合して向かいます。それまでに概要を頭に入れて、制服に着替えておいてください。ちなみにこれは神修から指定された労働時間をオーバーする形になりますので、この一件が解決したら特別休日と特別手当が付与されます。ここまでで質問は?」



みんなは黙ったままだ。

禰宜は「よろしい。では解散」と言って社務所から出ていった。その瞬間、我慢していたものが弾けたのか慶賀くんが「うおお!」と叫んで立ち上がる。


「来たぜ来たぜ! いよいよ神社実習って感じだな!」

「ちゃんとした依頼だぜ!? 薫先生に授業と称して無理やり依頼を手伝わされる訳でもなく!」

「特別休暇に特別手当……なんて素敵な響きなんだろう……!」



各々に喜びを噛み締めているようだ。

私のこれまでの実践経験と言えば、四月に蛇神を祓ったものとゴールデンウィークの怪異被害の解決、あとは恵理ちゃんの家の一件くらいだろうか。

中学の頃の薫先生はそれはそれは酷かったらしく、授業と称してみんなを色んな任務先へ連れて行っては実践を積ませていたらしい。


みんなに比べれば圧倒的に私は経験不足だ。この機会にたくさん経験を積んで、学年末の昇階位試験に臨みたい。


頑張るぞ、と気合を入れて配られたプリントに顔を寄せた。