社務所へ入るともうすでにみんな揃っていて、「禰宜〜、何やるの?」と慶賀くんが尋ねているところだった。
名前を呼ばれて手招きされた。嘉正くんが席を詰めてくれたので小さく拝んで隣に腰を下ろす。
「皆さん揃いましたね。では早速ですが本題に入りましょう」
「なんで俺たち呼ばれたんですか〜?」
「今からそれを話すと言っているんです。その喋り出したら止まらへんお口を一旦閉じて僕の話を聞きましょうね」
黒い笑みで微笑まれて慶賀くんが固まった。そうやね、と禰宜はにっこり頷くと私たちに一枚ずつプリントを配った。
「丁度ええタイミングで社へ仕事の依頼が来ました。今回は皆さんにまなびの社の神職として担当してもらおうと思います」
お互いの顔を見合わせた。
神職としての依頼、つまりこの案件は言霊の力を必要とする案件ということだ。
まなびの社へ来てようやく十日ほど経ったけれど、そのほとんどが祝詞奏上・清掃・御守授与の繰り返しで言霊の力を使う場面は一度もなかった。実習に来たけどこのまま何もせずに終わりそうだね、なんて話したのはつい数時間前のお昼休みの時だった。
他のみんなもそれに少し退屈さを感じていたらしく、わかりやすく目の色が変わる。