来光くんを追いかけるかどうか話し合って、結果今はそっとしておくことにした。
そのまま目指していた河原に向かい、川が見下ろせる位置に並んで腰を下ろした。少し気まずい沈黙が流れる。
「あいつ小学生の頃、あんまいい思いしてなかったんだな」
来光くんが当時されてきた事に明確に名前をつけなかったのを慮ってなのか本来の優しい性格ゆえなのか、泰紀くんは眉根を寄せてそう呟く。
いやでもどんな幼少期を過ごしていたのかを想像できた。
「あんなサイテーなあだ名、冗談でも付けるもんじゃねぇだろ! 来光のやつ何で何も言い返さねぇんだ? 俺らにはしょっちゅうブチギレるくせによぉ!」
慶賀くんが軽蔑する目で空を睨んだ。
「来光のいない所で俺らが色々言うもんじゃないよ。来光が話さないなら俺らももう話さない、忘れてやろう」
そうだね、と相槌を打つ。
私も自分のいない所であれやこれやと詮索されるのは良い気がしない。
「何だよ嘉正、薄情だな!」
「薄情? 何言ってんの。友達馬鹿にされて黙ってると思う? 今頃あいつらトイレとお友達だよ」
ふふ、と笑った嘉正くん。でもその目は笑っていない。瞳の奥に青い炎が静かにめらめらと燃えている。