「今はもう平気だし、小学生の頃なんてそういうものでしょ? ほら、クラスの中で一番暗くて大人しくてオドオドしてる奴をいじるみたいな。あの頃の標的が、僕だっただけ」


来光くんは目を伏せて、いつも通りの口調でそういう。

でももう平気なら、指が白くなるまで力いっぱい手を握りしめたりしないはずだ。もう平気なら、そんなに声は震えないはずだ。



「あれ、もしかして変な空気にしちゃった? ごめんごめん、申し訳ないし僕先に帰るよ。じゃあ」



俯いた来光くんが足早に私たちの間を通り抜けて歩いていく。

私たちはその背中を見送ることしか出来なかった。