「来光くんはどうしてるの?」
『薫先生ん家でお世話になってるよ。僕もバイトするか迷ったんだけど、三月の昇階位試験が怖くて勉強することにしたんだ』
そう言えば前にそんな話を来光くんから聞いたことがある。
来光くんは他のみんなと違って一般家庭で生まれ育ち、言霊の力が発現したのは小学生の頃。そのせいで色んなトラブルが起きてしまい、結果両親とは絶縁状態なんだとか。
私たちが通う学校は全寮制だけれど、長期休暇は帰宅しなければいけない。だからその間は、私たちの担任の先生である神々廻薫先生の家にお世話になっているんだとか。
『なら薫センセーそこにいんの〜?』
『いるよ。"笑ってはいけません"見てる。────薫先生! 慶賀と巫寿ちゃんです』
ガサゴソと音がして、やがて『はいはーい』と第三者の声が聞こえる。
『やっほー薫センセー! なあなあ俺も神々廻家の別荘泊まってみたい!』
確かにこの界隈じゃ御三家と呼ばれる神々廻家の別荘はちょっと気になるかも。
『あはは、元気にしてる?って聞く前に元気なことが分かって何よりだよ。てか君たちまで泊まりに来たら間違いなくこの家無事では済まないよね』
『失礼だな! 教え子を破壊神扱いかよ!』
『調薬室を毎日のように爆破してる人に言われたくないんだけど〜。ヤダよ、帰る家なくなったら困るし』
『別荘なんだからいいだろ! てか、こんなクソ忙しい時期に神々廻家のお坊ちゃんが別荘で"笑ってはいけません"見てていいのかよ!』