「……はい、持ってます。禄輪さんは、お母さんから引き継いだものだって」
ひとつ頷いてそう言えば「やっぱりそうか」と志らくさんは納得したように頷いた。
思った反応とは違って拍子抜けする。
「泉ちゃんが持ってたのは知ってたし、鼓舞の明は女の子に宿りやすいから、もしかしたらそうかなって」
「あ、なるほど……」
志らくさんはお母さんと親友だった志ようさんの妹だし、知っていてもおかしくない。
「あの……それで」
「うん?」
志らくさんが首を傾げた。
「私に鼓舞の明の使い方を教えて貰えませんか?」
「ええで。いつからやる?」
「へ?」
あまりにもあっさり快諾してくれてこれまた拍子抜けだった。
そんな私に志らくさんがくすくすと笑う。
「別に出し渋るもんじゃないし、継承するのは授力持ちの役目や。これのお礼もあるからな」
くしゃくしゃになったチョコレートの包み紙を手のひらで転がす。
「まあ、私が教えたところであんまり参考にならんと思うけど」
苦笑いを浮かべた志らくさんにぶんぶんと首を振った。
「そんな事ないです……! 今まで扱い方すら分からなかったので、教えて貰えて嬉しいです」
「いやでも、ほんまに期待せんといてな」