この際だから色々聞いてしまおう、と身を乗り出す。
「鼓舞の明はどうやって使っているんですか?」
「んー、決まった型を踏むこととが一割、気持ち二割、フィーリングが七割?」
「フィーリング……」
鼓舞の明を使う時は、感覚的な要素が大半だということだろうか。
言霊の力の調整も感覚的なものだった。きっとそれくらい難しいことなんだろうと予想ができる。
果たして自分に扱い切れるんだろうか。
「もしかして巫寿ちゃん授力持ち? 鼓舞の明の」
ごくんとチョコレートを飲み込んだ志らくさんが私を見上げた。
「あ、えっと……」と言葉を濁して俯く。
禄輪さんには親しい人以外には絶対に自分が授力を持っていることを話してはいけないと言われた。空亡戦で沢山の神職が襲われたのが起因しているんだろう。
授力は基本的に親から子へ引き継がれ、口頭でその使い方が伝えられるため教科書のようなものがほぼ存在しない。
けれど鼓舞の明を持っていたお母さんは幼い頃に亡くなっている。私はこれまでずっとこの授力をどう扱えばいいのか分からないまま過ごしてきた。
そして今目の前にいるのは同じ鼓舞の明をもつ志らくさん、聞くなら間違いなく今しかない。