結局歌番組に気を取られたりしているとあっという間に日付が変わる数分前になった。
窓の外はいっそう賑やかで、毛布を肩にかけてベランダに出る。社頭を彩る社紋の入った提灯が寒空に映えてとてと綺麗だった。
その時、テーブルの上に置いていたスマートフォンがブブと震えて通知を知らせた。
小走りで駆け寄って画面を叩くと、【チーム出仕】という名前のグループトークでグループ通話が始まっていた。
スマートフォンを手に取って毛布を肩にかけ直し、もう一度ベランダに出てから参加のマークを叩いた。
『おっ、巫寿が入ってきた! やっほー巫寿!』
『巫寿ちゃんこんばんは〜。良い月夜だね』
耳に届いた二人分の声に頬を緩めた。
「慶賀くん、来光くん。こんばんは、良い月夜だね」
『良い月夜だな! 巫寿も今日の奉仕終わった?』
「うん、少し前に終わったよ」
お疲れ様〜、と二人から労いの言葉を貰いお礼の言葉で返す。
『俺もさっき手伝い終わってさ、折角だし皆で年越できたらなって思ったんだけど、泰紀と嘉正入ってくるかな〜』
『嘉正は本家の人間だし、泰紀の所も神職足りてないらしいしからね。今頃忙しくしてるんじゃない?』
実家が歴史の長い由緒あるお社でお父さんが現宮司の嘉正くんと、本人曰く"ビンボー過ぎて神職が雇えない"お社が実家の泰紀くん。
学生とはいえ神職の家系の子供として実家の手伝いに励んでいるのだろう。