「────ちゃん、巫寿ちゃん。おーい、巫寿ちゃーん?」




はっと我に返ると、私の前にしゃがみ込んだ志らくさんと目が合った。

どういう状況なのか理解出来ずに目を瞬かせる。


あれ、私。



「終わったで。えらいボーッとしとったけど、初めての鼓舞の明でびっくりしてもうた?」

「あ……」



そうだ、私は夕拝に出ていて、そのあと志らくさんが鼓舞の明を使うと聞いて無理を言って見せてもらって。

あまりの迫力に動けなくなってしまったようだ。


隣に座っていたはずの禰宜はもういない。きっともう本庁からの依頼に出かけてしまったんだろう。



「気分悪いとかじゃない?」

「あ、すみません、大丈夫です。ただすごくびっくりして」

「あはは、せやろな。初めはみんなそんな反応やわ」



からからと笑った志らくさんはそのままばたんと後ろに倒れた。あまりにも突然のことに驚いて声を上げる。

慌てて志らくさんの顔をのぞき込むと、彼女は白目を剥いてひっくり返っていた。ヒッと息を飲んで慌てて「志らくさんっ!」と肩を叩く。

返事は「フゴーッ」といういびきで返ってきた。



「ね、寝てる……?」



お腹はちゃんと上下しているしいびきはやがて安らかな寝息に変わる。

どうやら本当に寝ているだけらしい。