禰宜の隣に腰を下ろして、軽く準備体操をする志らくさんを見つめる。
「良かったですね、巫寿さん。鼓舞の明はそう簡単に見ることができませんから、あなたはついてますよ」
「……やっぱりそうなんですね。無理を言ってすみません」
「志らくさんが良いと言ったんですから、この機会を逃さずしっかり学んでください。授力の保有者は先の戦いでかなり減ってしまいましたし」
先の戦いというのは間違いなく空亡戦を指しているんだろう。
空亡戦では授力の保有者がとりわけ狙われたのだと聞いている。
授力が受け継がれるのは母から子へ、もしくはその血肉を食らうことでその力を継承できる。空亡は多くの神職を食らうことで授力を手に入れようとした。
多くの神職が襲われ、今授力持ちの神職は当時の一割もいないらしい。
「志らくさんは、授力持ちだったんですね」
「ええ。授力持ちに会うのは初めてですか?」
「えっと……鼓舞の明は」
嘘では無いのでそう答える。
禰宜はひとつ頷いた。
「まなびの社のように地方にある小さな社には、滅多に本庁から大きな任務が降りてくることはありません。そういう依頼は基本的に大きな社が引き受けるからです。大きな社には人が沢山いて、自動的に優秀な神職も集まる。ですが稀に、人手不足などの理由で我々の元に降りてきます」
なるほど、そういう仕組みで本庁から仕事が降りてくるんだ。
という事は個人指名される薫先生は、かなり期待されているという事なんだろうか。