あやかし達のための社が開き、権宮司と禰宜を覗いてまた皆で社宅へ戻ってきた。

千早と頭飾りを外した志らくさんが「お腹空いた〜」と鼻歌交じりに席に座る。



「志らく、ご飯食べる?」

「食べる食べる。大盛りにしてお母さん!」

「はいはい。皆もおかわりいったら言うてや」



いそいそと台所へ向かって行った千江さん。

お母さん、と彼女が呼んだことにより予想は確信に変わる。イタダキマース、と手を合わせた志らくさんに「あの」と声をかける。

志らくさんは「んー? どした?」とチキンにかぶりつきながら首を傾げた。


「志らくさんは、志ようさんの」

「え、お(ねえ)? 巫寿ちゃんお姉と知り合いやったん?」

「やっぱり志ようさんはお姉さんだったんですね。知り合いではないんですけど、お母さんとよく写真に写っていたんで」



ごくん、と飲み込んだ志らくさんは目を丸くした。



「確かさっき自己紹介で椎名巫寿って……お姉の友達がお母さんって事はもしかして(せん)ちゃんの娘さん!?」

「はい、椎名泉寿(しいなせんじゅ)椎名一恍(しいないっこう)の娘です。いまは禄輪さんが後見人で……」

「禄ちゃんとも知り合い!? 嫌やわもっと早く言うてや! 禄ちゃん元気してる? この春に帰ってきたんよね? 禄ちゃんったら遠慮して手紙ひとつ寄越さへんからさ〜」



ばしばしと私の背中を叩く志らくさんにむせながら苦笑いを浮かべる。