千江さんに学校での話をたくさん質問されてそれに応えながらご馳走を楽しんでいると、19時の少し前になって一階の玄関がドタバタと賑やかになった。

軽やかな足音が聞こえて、居間の襖がパンと開く。



「お父さんもうすぐ19時やで! 裏の社開く時間やのに何してるん!」



現れたその人の顔を見て驚いた。

その人は紺色のジャケットに白いパンツスーツの、いわゆるオフィスカジュアルと呼ばれる格好をした若い女性だった。

ショートボブの黒髪を左だけ耳にかけた髪型に、意志の強そうな凛とした瞳。ツンと上を向いた小さな鼻に自然と弧を描いた唇。


ほだかの社の屋根裏で見た両親たちの写真。禄輪さんの隣で微笑んでいた女性、先代の審神者である志ようさんと瓜二つの顔立ちだったからだ。



目が合った。

水晶玉のように透き通った黒い瞳が私をじっと見つめる。



「ああそうか! 今日から学生さん来はるんやったね! 挨拶遅なって失礼しました」



少し恥ずかしそうに頬を赤くした彼女は、乱れた衣服を整えてその場に座ると、すっと前に手をついて綺麗な所作で頭を下げた。

頬に落ちた髪を耳にかけ直した彼女が笑う。写真でよく見た志ようさんの所作にそっくりだった。





「初めまして。まなびの社の本巫女、花幡(はなはた)()らくです」