「来年から、巫寿は色付き袴だね」
「そっか! 巫寿ちゃん結局進路希望は巫女職志望で出したんだっけ」
うん、とひとつ頷く。
神社実習が終わって神修に帰ってくるなり配られた進路希望調査の紙には、巫女職志望で提出した。
色々迷ったけれど、自分が持っている鼓舞の明を活かせるのは神楽を舞う機会の多い巫女職だと思ったからだ。
何よりもお母さんの存在が大きい。
お母さんが巫女として見てきた景色を私も見てみたかった。
あと「私の弟子なんやから巫女職一択やろ!?」と志らくさんに凄まれたのもちょっとある。
とにかく来年から、私はあの朱い袴を身に付けて巫女としての研鑽の日々が始まるんだ。
「さて、最後に不安要素しかないお二人さん」
少し前までニコニコ笑っていたはずの薫先生が急に真面目な表情になった。
おいおい嘘だろ、と青ざめた泰紀くん。
慶賀くんは熱心に祭壇に手を合わせ始めた。朝拝ですらそんな真面目に手を合わせたことなんてないのに。
「慶賀と泰紀、二人は────ほんっとにギリギリだけど合格」
ふたりが目を見開いて固まった。
「……マジで?」
「本当にギリギリだからね。部分点制度に感謝するんだよ」
二人を顔を見合せた。
見つめ合うこと十秒、バッと勢いよく両手を広げて熱い抱擁を交わす。そして────。
「ウオォオオッ!」
「よっしゃぁああッ!」
雄叫びを上げた。