先見の明で見た状況と同じだ。やっぱりあれはこれから起きる未来なんだ。


「とにかく、じーちゃんばーちゃんを背負って山から降りたらいいんすか!?」

「そうです! この辺りは地盤が緩く、連日の雨で地滑りも起きやすくなっているはずです! 可及的速やかに避難誘導するのがあなたがたの役目です!」

「よっしゃ!」


状況を理解した皆の表情がすぐに引き締まる。

この一年たくさんの修羅場をくぐり抜けてきただけあって急な状況にもとても冷静だった。

とにかく良かった。私が伝えるまでもなかったようだ。おそらく異変を感じた現地の神職さまが私たちに応援要請を出したんだろう。


現場に駆けつけた私たちは嘉正くんの指示の元、役割分担をして遭難者の避難誘導を始めた。

神職さま達が祝詞奏上でノツゴの数を減らしてくれているけれどやはりまだ多い。神職さまに教えてもらったノツゴを避ける方法を実践しながら少しずつみんなで山を下った。


やがて雨が本降りになる頃、全ての遭難者を近隣の社へ送り届ける事が出来た。

一息付く間もなく山の奥からゴゴゴと不気味な地鳴りが響き、遠くに見える山肌が滑って土砂崩れが起きるのが見えた。


「おいおいマジかよ!?」

「避難が長引いてたらこのじーちゃんばーちゃん達巻き込まれてたぞ……!」

「間に合ってよかった……」


本当に間に合ってよかった。

見上げながら息を吐いた。