ポタポタと雨水が屋形の天井に当たる音にパッと顔を上げた。
一時間くらい経っただろうか。
トランプゲームは一通りやり尽くして、皆は畳に転がってスマホを弄ったりウトウトしている所だった。
窓際によって御簾を持ち上げると、細かい雨がポツポツと入ってきた。灰色の分厚い雲が空を覆い隠している。
「雨降ってきた?」
トランプタワーを作っていた来光くんが私の隣に来て空を見上げた。
「うん。予報では晴れって言ってたのにね」
「山の天気は変わりやすいからね。出てる神職さま達は大丈夫なのかな」
確かに応援に行った神職さま達が少し心配だ。もし外で何かをしているならこの天気じゃ動き辛いだろうし。
私たちと一緒に待機していた神職さまは、何度かスマホで電話をかけるために車をおりているのを見かけたけれど、落ち着いた様子だった。
そこまで大変な事は起きていないようだけれど……。
そっと御簾を下ろしたその時だった。
突然、頭の中に映像が流れた。
それは白昼夢のようだった。森の奥、試験監督をしていたあの神職さまたちが険しい顔で手を合わせている。
その足元には無数の茶色い塊がある。赤子が四つん這いになっているような形の泥の塊だ。辺り一面に赤ん坊の鳴き声のような音が響いている。