車は一時間程度で静かに停車した。
一人ずつ名前を呼ばれて試験監督の神職さまと車を降りていく。
四番目に名前が呼ばれた私は、眼鏡をかけた生真面目そうな壮年の神職さまが試験監督らしい。見るからに自分にも他人にも厳しそうな人だ。
慶賀くんを担当する試験監督は開門祭の神話舞で少しだけ話したことのある神職さまだったから、当たるならその人が良かったな、なんて少し罰当たりなことを考えてしまう。
でも試験監督なんだからきっとどの人に当たったとしても公正公平に合否を決めてくれるはずだ。
車を降りるとそこは深い森の奥だった。
太陽の光は木々に遮られ薄暗く空気も重い。重いのは湿気だけのせいじゃないのはすぐに分かった。
────残穢が流れてきてる……。
「ついてきてください」
そう言った神職さまの後を10分くらいついて歩き、辿り着いた先には見るからに雰囲気のあるあばら家だった。
壁は何とか持ちこたえてはいるものの屋根の半分は崩れ落ち、すきま風が吹き込む音が不気味に響いている。
「さて、椎名巫寿さん。このあばら家の異変を解決してください。解決出来ればこの場で合格とします」
「え?」
思わず聞き返してしまった。
「ですから、このあばら家の異変を探し出し、祝詞を奏上して解決してください」
「あ……はい」
思わず頷いてしまったが、本当に私の試験内容は「このあばら家の異変を解決すること」なんだろうか?
もう一度あばら家を見る。