「ちなみにこいつは優しそうに見えてえらい腹黒や。見た目信じたら痛い目見るで」

「ふふふ、やめてくださいよ宮司。僕の腹は真っ白やないですか。それ以上余計なこと言うたら後悔しますよ」



怖い怖い、と笑った宮司に皆は絶句する。

一体誰を信じればいいんだろ、来光くんの呟きに深く頷いた。


なんだか個性豊かなお社だな……。



その時からからと戸が開いて、松葉色の袴をきた年配の女性が一人と、緋袴を身につけた20代くらいの若い巫女二人が社務所へ入ってきた。



「あれ、もう着きはったんやね。学生さん来たらすぐ呼んで言うたやん」



松葉色の袴の女性が宮司に親しげに声を聞ける。松葉色の袴は神職では無い神社関係者の装束だ。


少しふっくらした小柄な人で、整えられたキリッとした眉に目元と口元にくっきり付いた笑い皺。

今もそうだけれども若い頃は美人だど騒がれていたんだろうなと想像がついた。

その人は高い鼻を私たちに向けてにっかりと笑った。



「初めまして、遠いところからよう来てくれたね。職員の花幡(はなはた)千江(せんこう)です」



職員、ということはこの人が吉祥宮司の奥さんなんだ。

みんなと顔を見合せてもう一度「よろしくお願いします」と頭を下げた。