「が、眼帯をつけた男の人ですか!?」

「そうそう。なんか"君は本庁のやり方をどう思う?"みたいなの急に言われて、気持ち悪いし胡散臭いし、そもそもうちの社の神職以外は敵やと思ってるから無視して電車乗り込んだんやけどな」


眼帯をつけた知り合い、私にそんな知り合いは一人しかいない。

恐らく志らくさんがホームで会ったその男は神々廻芽、薫先生のお兄さんだ。

どうして志らくさんに話しかけたの? 志らくさんに会うためにわざわざこんな所まで来たんだろうか? でも何のために?

私が黙り込んでいると、ぽんと両肩に手を乗せられた。

顔を上げると眉を下げた志らくさんが私を見つめている。


「あのな巫寿ちゃん。不安にさせたら申し訳ないんやけどな、うち胸騒ぎがするんよ。うちに先見の明なんて大層な力は無いけど、お姉が死ぬ直前もそうやった」


志らくさんの瞳が不安に揺れる。

添えられた手に自分の手を重ねた。


「私、巫寿ちゃんのことは弟子やと思ってるし、妹みたいに可愛く思ってるんや。だからこそ、怪我して欲しくないし無理してほしくない」


志らくさんの言葉がじんわりと胸に染みて温かい気持ちになる。

純粋に嬉しかった。私の事をこんなにも心配してくれる人がいるということが。