「ああ、でも巫寿ちゃんは私からこんな話聞いたからって本庁のこと疑うんはあかんで。少なくとも神職は間違いなく必要な存在やし、物事を判断する時は自分の目で見て耳で聞いたものから判断しや」
はい、と素直に頷けば「ほんまええ子やな〜」とまたぐりぐり頭を撫でられた。
「長話堪忍な。そろそろ戻ろっか。何時の電車に乗るん?……ああ、そういえば電車で思い出したけど、私巫寿ちゃんに一個聞きたいことあったんや!」
「私に聞きたいこと、ですか?」
そうそう、と頷いた志らくさんは「えっとなぁ」と腕を組んで斜め上を見上げる。
「こないだ仕事帰りで電車待ってる時に、ホームで巫寿ちゃんの知り合い言う人に声かけられたんよ」
私の知り合い?
京都に知り合いなんていた記憶はないけれど……強いて言うなら八瀬童子一族の鬼市くんとは友達になったけど、鬼市くんなら志らくさんだって知っているはずだ。
「下の名前だけ名乗られてんけど、ホームやしうるさくてちゃんと聞き取れんくて。男の人でな、ちょい長めの黒髪に眼帯つけた高身長の男で」
勢いよく身を乗り出すと、志らくさんが「な、なんやの急に」と目を丸くする。