「人が一人死んだんよ。やのに、ありがとうって何? お姉は死ぬために審神者になったんとちゃう! 授力を生かして皆を守るために、言祝ぎで皆を導くために審神者になったんや……ッ!」
顔を真っ赤にした志らくさんはきつく唇を噛み締めて息を吐いた。
「長いこと一人ぼっちであないな場所に閉じ込めて、お姉の力を散々利用して、最後はお姉のこと使い捨てて、しまいには"私たちのために死んでくれてありがとう"って! 頭おかしいやろッ!」
辛くないはずがない。耐えられるはずがない。大切な人がそんな扱いを受けて、一度も再会しないまま帰らぬ人になったんだ。
大きく見開かれた目から雫が溢れた。
溢れたことに気づいた志らくさんが慌てて袖でゴシゴシと目元をこする。
「……ごめん、おっきい声出して」
いえ、と小さく首を振るとぐりぐりと頭を撫でられた。
「私にはさ、どうしても本庁に都合よく利用されたようにしか思えんかったんよ。だから本庁には従えんと思って神職を辞めた。まぁ、そん時に人手不足で社が回らんようになってお母さんが倒れてしもて、今は仕方なく手伝ってるだけ。あくまでも手伝ってるだけで、本職はキャリアウーマンや」
志らくさんはそう笑って肩を竦めた。
ずっと疑問に思っていた。
けれど一度聞いた時ははぐらかされて、話したくないことなんだと思っていたから聞かなかった。
志らくさんが会社員として務めているのにはそんな理由があったんだ。