「邪魔しちゃいましたか?」

「ええよええよ、集中切れとったし。もう帰る時間?」

「いえ。ちょっと社の中を見て回ってたんです」

「そーかそーか。そんなとこ立っとらんと入ってきや」


おいでおいでと手招きされ、雪駄を脱いで中へ入った。祭壇に一礼してから、座布団が並べられた客席の隅に座る。

志らくさんは扇子を広げて舞を再開した。


「巫寿ちゃんら、今回はホンマに大手柄やったな。私長いこと奉仕してきたけど、あんな大活躍した事ないわ」


舞いながら志らくさんがそう笑う。

慌ててぶんぶんと首を振った。


「禰宜が沢山サポートしてくださったおかげです。それに最後はやっぱり助けてもらったし」

「そんな謙遜するもんちゃうで。あたかも自分一人でやり遂げましたみたいな顔しとかんと」


そんな言葉に思わずプッと吹き出す。


「でも志らくさんの方が凄いです。昼は外でお仕事しながら夜は社で奉仕なんて」


会社から帰ってくるなり袴に着替えて夕拝の為に舞を舞って、それからは巫女としての奉仕。

それでも毎日パワフルに出かけていく志らくさん。一体いつ眠っているんだろうと少し不安になる。


「あー……まぁ、うちはそんな大層なもんちゃうよ。なんなら神職も一回辞めてるし」