「千江さん! 俺の制服どこぉ!?」

「昨日アイロンかけてハンガーに干しといたったやろ!」

「千江さん! 俺の昨日洗濯に出したパンツもう乾いてる!?」

「昨日の今日で乾くかいな! ドライヤーで乾かしたるからちょっと待ち!」


次の日、本日ついに神修へ帰る私達は朝からバタバタと帰り支度に追われていた。男子部屋からは何度も千江さんを呼ぶ悲鳴と、千江さんの怒鳴り声が響いている。

私は昨日のうちにある程度まとめていたので、後は洗顔道具と充電器をキャリーケースにしまうくらいだ。

奉仕を終える挨拶は昨日みんなでしたけれど、最後にもう一度社の中を見て回りたくて社宅を抜け出した。


外に出ると眩しい日差しが降り注ぎ目を細めた。気が付けばもう三月、日中は温かい風が少しずつ吹くようになっている。社頭の一角に植えられた梅の花が数日前に赤い花を咲かせていた。

まずは本殿に手を合わせる。

約三ヶ月間、お世話になりました。

心を込めてそう挨拶してから軒下にいる二匹の狛狐にも「元気でね」と声をかける。

本当にあっという間だったな、なんて思いながらゆっくり歩いていると神楽殿の扉が開いていることに気がついた。

風に乗って神楽の音色が聞こえてきて、ひょっこり顔を出すと志らくさんが舞の稽古をしている所だった。今日は土曜日だから仕事もお休みらしい。


振り向きざまに私が見えたらしく「巫寿ちゃん?」と舞を止める。