「引っかかっていたが確証が持てず報告書を読み返していたが、お前もこれに違和感を感じるなら確定だろう。宮司に報告する」
ファイルを閉じた恵衣くんはテキパキと一つにまとめて立ち上がる。
社務所を出ていこうとする背中を慌てて追いかけて隣に並んだ。
「どうしてこんな事になってるんだろう……」
「俺が知ってるわけないだろ。とにかく力の強い術者か何かが裏にいるのは間違いなはずだ」
力の強い術者……。
蠱毒のやり方を教えて御札を渡し、ノブくんを唆した人物。
ふと脳裏に一人の人物の顔が思い浮かび、唾を飲み込んだ。
まさかあの人が?
いや、流石にそれは考えすぎだ。だってあの人が────芽さんがノブくんを唆す理由が分からない。
薫先生と芽さんの間には何らかの軋轢があって、薫先生が彼のことを殺したいとまで憎んでいる事は以前教えてもらった。
芽さんは何かを企んでいて、二学期には本庁の役員や私たち学生を皆殺しにしようと空亡の残穢を取り込ませた妖を学校に放っている。
また力を持つ人間を狙ったのならば何となく繋がりは見えてくるけれど、ノブくんは狙われる理由がないはずだ。
とにかく何であれ、凄く"嫌な感じ"がする。不気味な気配を背後に感じて身震いするような。