少し前に夕拝をしたので妖たちがぞろぞろと社頭に屋台を組みたてたり参拝に来ている姿が見えた。それを横目に社務所を目指す。
扉を開けると、小上がりの上で熱心に何かを見ている恵衣くんがいた。
音に気がついたのか顔を上げて私を見た。
「恵衣くん、晩御飯だって。千江さんがご馳走用意してくれてるよ」
歩み寄りながらそう声をかけると、「今行く」と端的に返事をした恵衣くんが広げていた何かをパタリと閉じた。
何を読んでいたのだろうと少し手元をのぞき込むと、西院高校蠱毒呪害事件に関する私達の中間報告書と本庁に提出した報告ファイルだった。
そういえば休暇を貰った数日前も、恵衣くんは熱心にこれを読んでいた。
「ずっと読んでたの?」
「……ああ」
一つ頷いた恵衣くんはちらりと私を見上げた。目が合って首を傾げる。
すると片付けていた書類や報告書をもう一度広げた恵衣くんは私に向かい側に座るよう目で促す。
不思議に思いながらも腰を下ろすと、調書と書かれた書類のコピーをスっと滑らせて私に差し出した。
上から目を通す。
内容は蠱毒を捕獲しノブくんを保護した後、本庁で行われたノブくんに対する事情聴取の内容が記されたものだった。
「上から読んでくれ」
「上から?」
「いいから早くしろ」
相変わらずな態度に苦笑いを浮かべながらも言われた通りに上から読んでいく。