諸手を挙げて喜んだのは慶賀くんと泰紀くんだった。

勢いよく立ち上がり会議室から飛び出そうとした二人の襟首を禰宜がガッシリと掴む。まだ話は終わってません、と睨まれて身を小さくした。


「ほかの社の生徒たちはまだ実習中です。あまり羽目を外しすぎないように。神修生らしく節度ある行動を取るように」


ハイッと気合いの入った返事が揃う。

そんな私たちに禰宜はやれやれと肩を竦めた。


「最終日の夕方は千江さんがご馳走を作ってくださることになっていますから、その日だけは夕方までには帰ってきてくださいね」


では解散、その一言に皆は弾けるように会議室を飛び出した。

遅れを取った私に、「早くしろよ巫寿! 着替えたら鳥居の前集合な!」と泰紀くんが階下から叫ぶ。

分かった!と返事をしながら机の中に椅子をしまう。

向かいの席に座った報告書を読んでいる恵衣くんをちらりと見る。


「さっさと行けよ」


顔を上げることなくそう言った恵衣くん。

誘う前に断られてしまった。


「恵衣くんはこの後どうするの?」

「俺はもう少し報告書を読む。その後は試験勉強」


そうだ、昇階位試験。実習が終わればすぐに進級をかけた大事な試験が待ち構えている。

隙間時間を見つけてこつこつ勉強するようにはしていたけれど、初めての試験だしまだまだ不安は大きい。

本来ならば恵衣くんよりも私の方が勉強しなければいけないはずだけど、今日くらいは皆と遊びたい。