付け加えられていたのは、ノブくんが犯人だとつきとめたあの日起きた出来事の全てだった。


────神職二名負傷し離脱、その後学生三名が呪者を救出に向かい蠱毒に遭遇。京極恵衣の立案で松山来光が書宿の明にて御札で封印を試みるも失敗。椎名巫寿の鼓舞の明により再び書宿の明を使い、蠱毒を学校内の教室に封じることに成功。


私たち三人の名前がフルネームで記されている。

昨日、宮司と権宮司から事情聴取を受けた際に言われた事を思い出した。


『巫寿さんは、本庁に授力の証明を提出してますか?』

『あ……出してないです』


そうですか、と権宮司が顎に手を当てて何かを考え込む。

出していないと何かまずい事でもあるのだろうか、と不安になっていると私の気持ちに気がついたのか「ああ、違うんです」と権宮司は首を振った。


『今回の件で、授力が使用された事はきちんと報告書に書く必要があるんです。ただ呪力証明書を提出していないのなら、今回の報告で本庁に露見することになります。それについてはどうですか?』


ああ、そういう事だったんだ。

確か昔は授力を持っていると本庁へ届出を出さなければいけなかった。けれど沢山の授力持ちの神職が犠牲になった空亡戦を機に授力を隠す風潮になり、届出も出すか出さないかは本人の自由意志になったのだ。

私はそういうシステムがあったことすら最近知ったばかりなので、何もしていなかっただけだ。

禄輪さんからは授力はなるべく隠すように言われていたけれど、報告書に書く義務があるならこの際仕方がないだろう。