立ち上がろうと足に力を入れたその瞬間、ドンッと内側から扉を破ろうとする音がまた廊下に響く。
「何してる急げ!」
恵衣くんの手を借りて立ち上がり走り出そうと一歩踏み出したその時、また激しくぶつかる音がしてほぼ同時にバリッと乾いた音が小さく聞こえた。
恵衣くんにもそれは聞こえたらしく弾けるように振り返る。
見上げたその先に言葉を失った。
御札が────破れ始めてる。
バリ、バリバリ、立て続けに聞こえたその音が終わるよりも早く恵衣くんが飛び出した。
恵衣くんが扉を両手で強く抑えると同時に、御札がただの紙切れとなって木の葉のように目の前で揺れ落ちた。
次の瞬間、扉が沸騰したやかんの蓋のようにガタガタと激しく揺れ出した。
歯を食いしばった恵衣くんが全身で扉を押さえ付ける。
「立て巫寿ッ! 走れ! 行けッ!!」
そう叫んだ恵衣くんに目を見開いた。
恵衣くんは扉を押えるためにここに残る気だ。
バクン、と心臓が跳ねる。
先見の明の中でもそうだった。私たちを助けようとして恵衣くんは自分が犠牲になった。血溜まりの中で倒れる恵衣くんの姿が脳裏を過る。
また守ってもらうの? また誰かを犠牲にするの?
それもクラスメイトを、友達を、仲間を。
そうならないために変えようとした未来じゃなかったの?
でも私に何が出来る?
来光くんのように知識もない、恵衣くんのような技術もない。