一瞬不安が脳裏を過ってかぶりを振る。
いいや、恵衣くんならきっと大丈夫だ。恵衣くんを信じるんだ。
蠱毒が扉を通って中へ入ってきた。私とノブくんは必死に身を縮めて気配を潜める。こちらへ振り向くことなく歩を進める。
伸ばした引き手にぎゅっと力を入れたその時。
「……行けッ! 巫寿!」
名前を呼ばれた。
勢いよく外にとび出て、続いてノブくんが飛び出してきたのを確認して扉を閉めた。閉めた扉と扉枠を繋げるようにして御札を叩き付ける。
胸の前で柏手を打ったその瞬間、札の文字が溶けるように光りを放った。
御札の効果がちゃんと発揮されたんだ……!
後は恵衣くんが外に出て、同じように札を貼れば教室を封じることが出来る。
ガシャン!と机や椅子がぶつかる激しい音がして、慌てて前の扉へ走った。
「恵衣くんッ!」
名前を呼んで覗き込むと同時に「退けッ!」と怒鳴られて目の前に恵衣くんが迫ってきた。その後ろには蠱毒が迫ってきているのが見える。
飛び出した恵衣くんが勢いよく扉を閉めて御札を叩き付ける。札が黄金色に光り輝く。
次の瞬間、教室の中から扉に体当たりするような激しい音がした。
驚いて尻もちをついた。けれど扉は隙間なくきっちり閉められている。
こっちの扉にもちゃんと御札が効いてる……!
「おいさっさと立て! 走るぞ!」
恵衣くんが私の二の腕を掴んだ。