やっぱり怒った、と肩を竦めた。
でも我慢しなくちゃいけないほど嫌な相手ではあるんだな、と苦笑いをうかべる。
とにかく今の私たちに出来ることは恵衣くんの作戦くらいしかない。
「分かった」とひとつ頷いた。
その時、バタン!と傍で何かが倒れる音がしてハッと振り向くと、来光くんが仰向けにひっくり返っていた。
「ら、来光!? 大丈夫か!?」
驚いたノブくんが慌ててその肩を揺する。
「驚かせてごめん、でも大丈夫。疲れてるだけだから」
青い顔をした来光くんは目を瞑ったまま重そうに片手を上げて深く息を吐いた。
授力をこの短時間で三回も使ったんだ。疲れるに決まっている。
「出来たのか?」
「お前ねぇ……人の心配を先に出来ないの? そこ」
呆れた来光くんが目で足元を示す。
ノブくんが持っていた御札と全く同じものが二枚並んでいる。
「よし、じゃあこれを────」
恵衣くんが何か言いかけたその時、つま先から頭のてっぺんまでを逆撫でされるような嫌な感覚が走り息を詰まらせた。
身震いするほどの嫌悪感と全身が拒絶するこの感じは。
来たんだ、この階に。