昼休みに話しかけて来る時と同じ声だ。落ち着いていて優しくて、穏やかな来光くんの声が私たちみんなの名前を呼んだ。
優しいはずなのに胸が引き裂かれるような切ない音に聞こえる。
「────僕と友達になってくれてありがとう」
扉の向こうで来光くんが笑った気がした。
キン、と耳鳴りがした次の瞬間、激しい物音と共に扉が揺れた。
扉の窓に赤が飛び散り、数秒後には隣の被服室の窓が割れる音がした。
呆然とその赤を見つめる。
嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ。そんな、どうして。何で恵衣くんが、来光くんが。嘘だ。そんな。だって。
どうして私はこんな所で座り込んでいるの? どうして何もしていないの?
私なら出来るって、禰宜がそう送り出してくれたはずなのに、目の前で鮮赤が飛び散るのを眺めているだけだった。
まただ、また助けてもらった。また私は周りの人に助けられた。
この一年新修で、大切な人を守るための強さを学んできたはずなのに。今度は私が守るんだって、そう決めたはずなのに。
嫌だ、こんなのは嫌だ。
私は皆を、守りたい……ッ!