「お、俺は悪くない……」
「いつまで言ってんだよ!? こうなったのはノブくんのせいだ! 認めろッ!」
「だって……だって! こうでもせんと耐えられへんかったんや……ッ! 一人になるのも居場所がないのもいじめられるのも、もう懲り懲りなんや!」
来光くんが目を見開いた。
見開いた瞳にすぐに水の膜が張って、真っ赤になった頬を滑る。落ちた雫はノブくんの胸元に落ちた。
その雫に気がついたノブくんが戸惑うように一瞬怯む。来光くんは胸ぐらを離して、代わりに力なくその胸を叩いた。その拳はどんどん強くなっていく。
「……耐えられない? 居場所がない? 一人ぼっち? どこ見てんだよこの間抜け!」
大きく振りかぶった拳は、触れる前に力が抜けた。
「あの頃、ずっと一緒にいたのは誰だよ……。僕はずっとノブくんの友達だったろ。僕はノブくんの事をずっと待ってたよ! それなのに一度の過ちで、僕のことを信じずに逃げたのはノブくんだろ!? ノブくんが自分から居場所を捨てたんだろ!?」
雫がぼたぼたと小雨のようにノブくんの胸元を濡らしていく。
「……一人ぼっちの僕に手を差し出してくれたあの時のノブくんは、間違いなく僕のヒーローだった。怖がりで臆病なくせに意地っ張りの見栄っ張りで、僕が一緒だったら見栄を張ろうとなんでも先にやろうとしてたよね。そんな君がとても格好よかった」