「鬼脈通るための迎門の面、一枚いくらすると思ってんの。一枚三万だよ、行きだけで三万」
「えっ、そんなにすんの!?」
「知らなかったの? 帰省する時どうしてたのさ」
「だって毎回実家から送られて来るしぃ」
唇を尖らせて言い訳する慶賀くん。
慶賀くんの実家もそれなりに大きなお社だったことを思い出す。
前に聞いた話では、十五代前の神主に慶賀くんのお家である志々尾家の人が選ばれて、それからはずっと志々尾家の人が神主の職に就いているらしい。
大きな社の神主の家系、お坊ちゃんという訳だ。
そりゃ迎門の面の値段も知らないだろうなぁと肩をすくめる。
「使っていいのは海を越えなくちゃいけない北海道か沖縄の社に行く人だけなんだって」
「へぇ〜。あ、じゃあ聖仁さんと瑞祥さんじゃん! あの二人たしか北海道だったよな?」
そんな話をしていると、ポケットに入れていたスマホがブブッと震えた。
メッセージが届いている。送り主はちょうど話をしていた瑞祥さんからだ。
トーク画面を開けて、一緒に送られてきていた写真を叩いて吹き出した。
「瑞祥さんと聖仁さん、鬼脈は使わず交通機関で行ってるみたいだよ」
怪訝な顔をしたみんなが振り向く。
スマホの画面を見せた。
在来線の電車に乗って、有名なイカ飯の駅弁を頬張る二人が笑顔で写っている。