仕返し? いい事? 人を呪うことが本当にいい事だと思っているの?

襲われた生徒は命の危険だってあった。ノブくんを救いに来た神職のふたりは今も残穢に苦しめられ、私達だって今危険の中にいる。

それなのに「いい事」だって言えるの? 自分の利益のために周りを傷付けてもいいと思ってるの?

あまりにも身勝手な言い分に、怒りで握りしめた拳がぶるぶると震えた。


「おいお前」


冷たい声にノブくんの肩がびくりと跳ねる。


「日本神社本庁は"全ての人と妖を守り導く"という崇高な指針のもと、こういう一般人の呪い被害が発生した場合、被呪者だけじゃなく呪者も保護する方針を取っている。罰を与える権利は無いが、それ相応の指導をして呪者を更生させて社会復帰させるためだ」


恵衣くんが片膝をついてノブくんの襟元を掴んだ。


「今のお前に更生の余地はないと判断した。だから本来なら、俺達はわざわざお前を保護する必要がないという事だ」


ノブくんが怯えた目で恵衣くんを睨む。


「死にたくないならその喧しい口を閉じてさっさと立て。俺たちの邪魔をするな」


勢いよく手が離されて、ノブくんが後ろに倒れ込む。呻き声が聞こえた。

来光くんが慌てて駆け寄り肩を抱きかかえた。

依然として青い顔をしたノブくんは頭を抱えてぶつぶつと呟き続ける。