う、と小さなうめき声がして僅かに頬に色が戻った。瞼が震えてゆっくりと目が開く。ぼんやりとした瞳にやがて光がさして、顔が恐怖に引きつった。

ヒッと息を飲む音が聞こえて、咄嗟に手を伸ばす。三人の手がノブくんの口元で重なった。


「叫ぶな、死にたいのか」

「静かに!」


二人に凄まれてノブくんは恐る恐る頷いた。

ゆっくり手を離せば、今度は青い顔をしてガタガタと震えながら頭を抱える。来光くんが膝をついて目を合わせた。


「危険な状況だってのは理解出来てるよね?」


俯いたまま何も言わないノブくん。


「お前のせいで何人もの人が被害に遭ってるんだぞ。よくもまぁそんな被害者ヅラが出来たものだな」


普段なら窘める恵衣くんの毒舌も今回ばかりは私も来光くんも咎めなかった。

少なくとも禰宜と権宮司がああなったのはノブくんが原因なんだから。


「お……俺は、俺は悪くない……俺は悪くない俺は悪くないッ! 全部アイツらが、アイツらが俺をいじめたから……ッ!」


頭を抱えて目を見開き何度も何度もそう唱える姿は明らかに異常だった。


「だってこんな事になるなんて、言ってなかったし! ただ仕返しができるって、それで妖の数も減らせて……いい事しかないって……っ!」


ああっ、と声を上げて膝に顔を埋めた。