給食用エレベーターは上下に動くから縦に細長い。各階に同じハリボテの壁があるとしても、もし捕まえたものをその中に閉じ込めておきたいなら────上から中へ放り投げるはずだ。
階段を駆け上がって最上階へたどり着いた。廊下へ出るなり、一層濃くなった残穢に思わず口元を抑える。確認するまでもなく残穢が溢れだしている場所が奥にあることは分かった。
近付くにつれ肌が粟立ち、耳の奥で黒板を爪で引っ掻くような嫌な音を感じた。急に胸が苦しくなって息がつまり浅い呼吸を繰り返す。
とにかく悲しくて苦しくて、わけも分からずぼろぼろと涙がこぼれた。咄嗟に壁に手をついたその時。
「おい」
反対の手の二の腕を掴まれて、何とか座り込まずにすんだ。
重い頭を上げると、こめかみを抑えて顔を顰めた恵衣くんが私を見下ろしている。
「まともに歩けないなら戻ってろ。足でまといだ」
そういう恵衣くんも額に脂汗を滲ませて、同じように苦痛をこらえるような表情を浮かべている。