来光くんが歩み寄り壁にそっと手を添わせる。
「ああ、これ給食用のエレベーターだよ。使われなくなったからハリボテの壁で埋められてるんだね」
「給食用のエレベーター? そんなのがあるの?」
こんこん、と壁を叩き来光くんはひとつ頷いた。
「昔、給食を各階に運ぶ専用の小型エレベーターがあったんだよ。生徒が扉に挟まれる事故があって、今はこうして塞がれてる所が多いみたい。僕も昔通ってた小学校で、この壁はハリボテで奥が空洞だから触るなって言われてたんだよね」
なるほど、だから奥に空洞がある音がしたんだ。
この高校も創立から百年は経っているし、給食用エレベーターが使われていた時代があってもおかしくはない。
「空洞? おい今そう言ったか?」
「な、なんだよ。そうだって言ってるだろ。この奥は空洞になってて────っ!」
顔を合わせて目を見開く。
次の瞬間、私たちは一斉に走り出した。