「来光くん大丈夫!?」
ぶつけた額をさすりながら「なんとか」と顔を上げた。衝撃で落ちたのか床に手をはわせて眼鏡を探す。
スマホライトで辺りを照らすと壁のそばに転がっていた。拾い上げて手の上に置くと「ありがとう」と力なく笑う。
私たちにも聞こえるくらい大きなため息をついた恵衣くんに、来光くんがムッとした表情で立ち上がる。やれやれと苦笑いを浮かべて私も立ち上がった。
この暗闇でスマホのライトだけじゃ心許ない。急に壁が目の前に迫ってくるかもしれないし私も気をつけなくちゃ。
壁……壁?
ライトでメガネが落ちていた先を照らすとクリーム色の壁が見えた。歩み寄って壁にそっと手を当てる。
「おい、何してる」
そう声をかけられて振り返る。
「さっき、壁にぶつかったにしては大きな音だったから、ちょっと気になって」
普通こういう壁にぶつかったら鈍い音がするはずなんだけれど、来光くんがぶつかった時響く大きな音がした。
その壁は私が両手を広げたくらいの横幅しかなく、壁と言うよりも柱が突出しているように見える。
コンコン、と叩いてみるとやはり奥に空洞があるような軽い音がした。